風の歌を聴け(村上春樹)
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」
村上春樹の処女作です.
私が初めて(そして今のところ唯一)読んだ村上春樹の小説です.
最初読んだときは,は?て感じました.
それっぽいことがそれっぽいかっこいいセリフ回しで書いてあるだけで,中身も関連性もないし…売れないロックバンドの歌詞を集めたみたいだなあ,と.
ただ何回も読むとだんだん自分の中でいろいろな解釈がでてきて,面白くなってきて,さすが村上春樹…だてに人気があるわけではないのだな…
高校の時,私が好きだった国語の先生がハルキストだったのですが,
「たぶん女性は村上春樹はあまり好きではないと思う.なぜなら,彼の小説に出てくる女性は現実にいそうな女性ではなく,男から見た理想の女だから.」
と言っていました.
なんとなく納得.
この本に出てくる女性は
①左手の指が4本しかない女性
②離婚したての年上女性
③ラジオで僕に曲を贈った女の子
④僕が最初に寝た女の子(高校時代)
⑤僕が2人目に寝た女の子
⑥僕が3人目に寝た女の子(大学時代,その後自殺)
⑦鼠と何かあった女のこ
⑧僕の兄の彼女
⑨ラジオに手紙を送った病気の女の子
⑩僕の妻
の10人の女性です(見落としがなければ)
恐らく①と⑦が同一人物,③と⑨は姉妹だと思って私は読みました.
また,①は双子の妹がいると言っていたから,誰かがそうなのではとも思うのですが...
双子の妹は”三万光年くらい遠くにいる”と言っていることから,最初は⑥かなと思ったけれど,そのあとに家族の悪口を言うのはよくないという趣旨のことを言っているから,単に心の距離のことかと考えたり,しかも①は地元に帰省中に会ってるけど,⑥は東京で出会ってるよなあと考えたり….
ただ,そもそも上に書いたのは全部,
「物語に出てくる人は何かしらの関係性を持っていて,物語に出てきていない人との関係性は持っていない」
「物語におけるすべての文章は意味とつながりを持っている」
という読み方をしたときに考えられる関係であって,もしかしたら鼠となんかあった女の子なんて話には微塵も出てきてない子かもしれないのです.
でも,その可能性も含めたうえで面白いと思ったし,もっと村上春樹の本を読んでみたいと思いました.こうしてハルキストが増えていくんだろうな.
放って置いても人は死ぬし,女と寝る.そういうものだ.