神様のボート(江國香織)
あたしが発生したとき、あたしのママとパパは地中海のなんとかという島の、リゾートコテッジにいたのだそうだ。
神様のボートに乗ってしまった母葉子とその娘草子のお話で、話は2人の視点から交互につづられます。
神様のボートに乗る=必ず戻るといってでていった恋人/父親を待たなければいけない運命、というところだと思うのですが、表現の仕方がさすが江國さんという感じです。
「神のみぞ知る」という言葉もあるように、「神様の」というだけでかなり先が見えない雰囲気があるのに更に「ボート」なんてきたらもう一どうなることやら。
葉子(母親)は神様のボートに乗り続けます。たぶんもう降り方も忘れていれば、降りるという選択肢の存在も忘れているのでしょう。
それに対し、草子(娘)はそんな母親を見てそだちます。そして神様のボートから降りようとする...。
娘が年齢の成長とともに心境が変わっていく様子の表現もとてもうまいです。
内容を乱暴に言ってしまえば、男を待つ馬鹿で夢見がちな女と振り回される娘の成長、といったところでしょう。
でも、江國さんの繊細で丁寧で的確な心理描写や表現によって素晴らしい話になっています。
寝る前に読んだのですが、泣きすぎて枕が冷たくなってしまいました。
特に草子が寮にはいってからの展開が...。
ところで、私は終始草子に感情移入しながら読んでいましたが(おそらく年齢的に近しいから)、葉子に感情移入する方っているのでしょうか。
「あの人のそばで眠れれば、なにも怖くなかった」