卵の緒(瀬尾まいこ)
僕は捨て子だ。
この書き出しに驚かない人がいるだろうか。いや、いない。(反語)
サスペンスに転んでもおかしくない書き出しですが、ほんわかとした話です。
この本には、「卵の緒」と「7’s blood」という2つの作品が収められています。
卵の緒は捨て子、7’s bloodは血のつながりのない姉弟が主役という、どちらも一見ハードな題材を扱っています。
ここからドロドロとした話にもっていくのは簡単ですが、そうではなくほんわかしたところに上手く着地させています。
どちらも家族の絆に感動する話です、と書いてしまうと陳腐で説教くさい感じがしますが、この話はスッと入ってきます。
私は、物事を斜に構えて見てしまうことが多いです。本や映画で泣くことはまずないです。
でも、この本は読むたびに泣いてしまいます。
悲しいとかではなく、ただただ涙が溢れてきます。
ずっと手元に置いておきたい1冊です。
それはもっと、掴みどころがなくてとても確かなもの。
だいたい大切なものはみんなそうだ。