※あくまで個人の感想です。

本や映画の感想を、つらつらと。

死神の精度(伊坂幸太郎)

 

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 

ずいぶん前に床屋の主人が、髪の毛に興味なんてないよ、と私に言ったことがある。 

 

カテゴリーに、ファンタジーを足そうかと悩みました、がやめました。

 

伊坂幸太郎の短編小説です。

主人公は死神の千葉。

彼の仕事は、一週間、対象の人間に接触し、その人が死ぬか死なないかを決めること。

そして、よほどの理由がない限り、対象は死ぬこととなる。

 

どうしても、テーマがテーマだけに救いようのない話もあります。

でも、短編同士のバランスがいいです。

最後の話で、わあっと救われます。さすが伊坂幸太郎

読みやすくて、面白くて、記憶に残る話を書ける人ってあんまりいないんじゃないかなって思います。

 

この小説では、千葉のキャラクターが光ってます。

ミュージックが大好きで、ちょっとずれてる。

また、短編一個一個が恋愛物だったり、ミステリだったりするので読んでいて飽きないです。

わたしは’恋愛で死神’というエピソードが好きです。

 

でもやっぱり、何度読んでも一番最後のエピソードはずるいと思います。

 

でも、たとえば、自分と相手が同じことを考えたり、同じことを口走ったりするのって、幸せじゃないですか。 

 

我らが隣人の犯罪(宮部みゆき)

 

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)

 

僕たちがとうとう自力救済に乗り出したのは六月半ばのことだった。

宮部みゆきさんの、短編推理小説です。

本格的な推理小説から、ほっこりする謎解きまで5作の全くテイストが異なる作品を楽しむことができます。

 

私の中で、宮部みゆき推理小説家です。トリックが綺麗だから。

たまに、トリックが汚なかったり杜撰だったりする人がいて好きじゃないのですが、その点、宮部みゆきは安心して読めます。

とても綺麗に、すっきり回収してくれて、読後感も完璧です。(そこが面白くない時もあるのですが...。)

ステップファザー・ステップなども読んだのですが、本当に器用な作家さんだと思います。

 

この本に収録されている5作の中で、私が一番好きなのは”サボテンの花”です。

主人公は定年間近の教頭先生。この先生と、あるクラスの話なのですが、とてもほっこりします。

現実的か、と言われれば現実的ではありません(今の学校教育を考えると)。

でも、素直にいいなあと思えます。

 

1つ1つの話は短いけど、推理小説としても綺麗にまとまっているのでおすすめです。

 

不公平なことは山ほどあるけど、たまにはこういうこともあるでしょ?

 

 

 

 

ジーキル博士とハイド氏(ロバート・L・スティーブンソン)

 

ジーキル博士とハイド氏 (新潮文庫)

ジーキル博士とハイド氏 (新潮文庫)

 

 

弁護士のアタスン氏は、いかつい顔をした、ついぞ明るい笑顔を見せたこともない男である。 

 

以前も書きましたが、私の一番好きな小説です。

どのくらい好きかというと、日本語訳は(おそらく)全パターン読んで、文をほぼ暗記してて(読みすぎて自然に)、原典(英語)も買って読んで....、というくらい好きです。

 

私はもともと翻訳された文章を読むのは苦手です。

日本語的な不自然さを感じてしまって感情移入できないのと、単純にカタカナを覚えることが非常に苦手で、登場人物名を覚えられないからです。

この本も、挫折翻訳本リスト(不思議の国のアリスオリエント急行殺人事件...etc)に入るかと思っていたら、なぜかハマってしまいました。なんでだろう。

 

この本自体は有名なので、読んだことはなくても、題名と二重人格がテーマであることを知っている人は多いのではないかと思います。

 

とりあえず、読んだことがない人は1回読んでみることをおすすめします!

新潮文庫版で286円(税別)というお手頃価格!

しかも薄くて持ち運びにも便利!

 

以上、一人でもジキル&ハイドの読者が増えることを願って...。

 

いつか記憶からこぼれおちるとしても(江國香織)

 

いつか記憶からこぼれおちるとしても (朝日文庫)

いつか記憶からこぼれおちるとしても (朝日文庫)

 

学校では毎日いろいろなことがおこる。 

 

 私がこの本を初めて読んだのは、小学校5年生くらいの頃だったでしょうか。

図書館で、題名が目にとまり読み始めたことはよく覚えています。

 

この本がきっかけで、私は江國香織にはまっていくのですが、江國香織の小説を読むと心の奥がツンとする気がします。

なつかしさとか、せつなさとかいろんなものが一気にこみあげてきて、気づくと涙がこぼれおちてます。

江國香織の本は、毎度毎度静かに号泣しながら読んでいます。

 

この作品は、女子校の同じクラスに通う生徒のそれぞれの日常を切り取った連作短編集です。

私は中・高が女子校だったのですが、私の通っている学校とこの本にでてくる学校はどことなく似ています。

女子校は不思議だ。気楽で、それでいてよそよそしい。

もちろん、女同士が陰湿にギシギシしあっている女子校の話も聴きますが、ここはそうではありません。

気楽で、それでいてよそよそしい。というのは、とてもいい得ているなあと感心せずにはいられません。

 

世のなかは好きな人ときらいな人でできているわけじゃなく、好きな人と、どうでもいい人とでできているのだ。 

 

ペンギン・ハイウェイ(森見登美彦)

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

ぼくは たいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。

 

「好きな作家を1人挙げてください。」といわれたら、間違いなく「森見登美彦さん」とこたえます。(好きな本だったらジキル博士とハイド氏)

きっかけは、”夜は短し歩けよ乙女”でした。

 

森見さんの特徴は2つあると思います。

1つめは独特の文体です。

「のである。」とか少し古めかしい言い回しや単語が多いです。

2つめは設定です。

イケてない、いわゆる非リア充な大学生(たぶん京大生)が奮闘する話が多いと思います。

ですが、この話はどちらもあまりあてはまりません。

独特の文体は一応健在ですが、”太陽の塔”とかと比べると濃度が薄い気がします。

そして、設定が全く違います。主人公は小学校4年生の男の子、アオヤマ君。

森見さんの特徴が薄い作品、ともとれますが新しい風をとりこんだ作品ともとれます。

でも、読むとやっぱり森見さんの作品だ、と納得します。

 

この作品で、私が好きなのはアオヤマ君の父親です。

彼はとても的確にアオヤマ君に助言をします。

また、なんとなくすべてを把握しているかのような言動が多いです。

いい大人、というと定義が曖昧ですが、この父親は大人はかくあるべき、というのを示しているように思います。

 

また、アオヤマ君が小学校3年生のときの”郵便少年”という話もあります。

 

ほっと文庫 郵便少年

ほっと文庫 郵便少年

 

 ペンギンハイウェイでアオヤマ君のファンになった方は、こちらもぜひ。

 

世界の果ては折りたたまれて、世界の内側にもぐりこんでいる。 

 

きらきらひかる(江國香織)

 

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

 

寝る前に星を眺めるのが睦月の習慣で、両目ともに一・五という視力はその習慣によるものだと、彼はかたく信じている。 

 

アル中の笑子とホモで紺くんという恋人もいる睦月。

二人は結婚していても、恋人をもつ自由のある夫婦。

ごっこみたいに楽しくて、気ままで都合のいい結婚 

 のはずだったけど....。

 

私はこの話を読むたびに泣いちゃいます。(というより江國香織の本はだいたい泣いちゃいます。)

悲しいというよりは、切なさとか淋しさがこみあげてきます。

そして最後はハッピーエンドに安堵して号泣。

 

とっても設定に癖のある恋愛小説ですが、書かれているのは痛いほどの純愛です。

 

もちろん作品自体も素晴らしいのですが、江國さんのあとがきもすばらしいです。

普段からじゅうぶん気をつけてはいるのですが、それでもふいに、人を好きになってしまうことがあります。 

素直にいえば、恋をしたり信じあったりするのは無謀なことだと思います。どう考えたって蛮勇です。

 あとがきで二回目の号泣。

 

なんとなく泣きたいとき、せかいでひとりぼっちにな気がしたときの必読本です。

 

 あしたもあさってもその次も、僕たちはこうやって暮らしていくのだ。

 

グラスホッパー(伊坂幸太郎)

 

グラスホッパー 角川文庫

グラスホッパー 角川文庫

 

 

街を眺めながら鈴木は、昆虫のことを考えた。 

 

 私が伊坂幸太郎にハマるきっかけとなった本です。

本の内容紹介にもある通り、まさに”分類不能”な小説です。

 

復讐が生きがいになっている一般人の鈴木、目を見せると相手が自殺する鯨、ナイフを使う殺し屋の蝉、この3人の視点から物語は語られます。

私はこの話が本当に好きで、読みすぎて本のカバーが破れちゃってます(笑)

 

殺し屋さんがいっぱいでてくる裏社会に、一般人が復讐のために乗り込み事件に巻き込まれていく話です。

とても濃いキャラクターがいっぱいでてくるうえに、ストーリーの疾走感もよく、かつ全体が綺麗にまとまっていて読後の爽快感が最高です。

読んでいるとき、ほんとにハラハラドキドキします。

 

そして魅力的な裏社会の方々....!

私が一番好きなのはジャック・クリスピンです。

蝉の上司である岩西が好きなミュージシャンで、直接は出てきません。

岩西の口癖は、「ジャッククリスピンいわく....」

 岩西のセリフを通してしてしか知ることができないジャッククリスピン....!

登場人物と呼んでいいのかどうかも微妙ですが、大好きです。

 

そして、この魅力的なキャラクター達は、伊坂幸太郎の別作品にもでてきます。

 

 

魔王 (講談社文庫)

魔王 (講談社文庫)

 
モダンタイムス(上) (講談社文庫)

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

 

 

私は、小説のコミカライズは読まない派(告白で失敗したので)なのですが、魔王は別の話と考えて両方読むべきです。大須賀さん、すごいです。(Waltzもめちゃめちゃ面白い)

 

政治家に目を光らせろ、さもなければ、明日には歌も取り上げられる 

 

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