キッチンは実験室(ランゲルハンス島)
今日は趣向を変えて、Web小説です。
comicoノベルで毎週月曜日に連載されている料理エッセイです。
題名からもなんとなく察せられますが、これは「美味しい料理」を作るエッセイではなく、「イっちゃってる料理」を作るエッセイです。
これは、1人の無謀な若者の愛と勇気と涙の物語――。(本文より)
私は本は紙で読みたい派なので、液晶で読む小説には気楽さや浅さを求めています。(失礼な話ですが)
このエッセイはとても気楽に読めて楽しめます。
また、作者さんがどんなに凄まじい料理を作ってしまっても、ちゃんと食べてる描写があるので安心して読めます。
にょっ記(穂村弘)
できたてのおにぎりを食べる。
穂村弘さんの日記です。
穂村さんは、現代短歌を代表する歌人の1人だそうです。
短歌については詳しくないので知らなかったのですが....。
Wikipediaで調べると、なかなか面白い経歴の方でした。
というよりは、自分との共通点が多く、勝手に親近感を抱いています(笑)
さて、この日記では一般的に言うとノンフィクションだけでなくフィクションも混ざっているように感じます。
例えば、ちょくちょく”天使”がでてきます。そして会話してます。
私は、穂村さんにとっては全てノンフィクションなんだろうなと思っています。
周りからは見えてなかったとしても、穂村さんのなかには確かにある”現実”。
うこんやちんすこうに思いを馳せたり、由美かおるのグラビアから国家陰謀の話になったり、日常からの着眼点や発想の展開がとても秀逸です。
また、歌人であるからか文がどこか詩みたいで、かつ言葉の選び方がとても綺麗です。
この世界にはまってしまうと、もう抜けられません。
とりあえずエッセイ第一作である、「世界音痴」から読もうと心に決めたのでした。
「きびしい半ケツが出ました」
卵の緒(瀬尾まいこ)
僕は捨て子だ。
この書き出しに驚かない人がいるだろうか。いや、いない。(反語)
サスペンスに転んでもおかしくない書き出しですが、ほんわかとした話です。
この本には、「卵の緒」と「7’s blood」という2つの作品が収められています。
卵の緒は捨て子、7’s bloodは血のつながりのない姉弟が主役という、どちらも一見ハードな題材を扱っています。
ここからドロドロとした話にもっていくのは簡単ですが、そうではなくほんわかしたところに上手く着地させています。
どちらも家族の絆に感動する話です、と書いてしまうと陳腐で説教くさい感じがしますが、この話はスッと入ってきます。
私は、物事を斜に構えて見てしまうことが多いです。本や映画で泣くことはまずないです。
でも、この本は読むたびに泣いてしまいます。
悲しいとかではなく、ただただ涙が溢れてきます。
ずっと手元に置いておきたい1冊です。
それはもっと、掴みどころがなくてとても確かなもの。
だいたい大切なものはみんなそうだ。
オー!ファーザー(伊坂幸太郎)
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/11/22
- メディア: Kindle版
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由紀夫の隣を歩く多恵子が、父親への怒りと不信感を口にしている。
設定や人名から、なんか古そうな作品だな.....。と思っていましたが、そうでもありませんでした。(2006~2007に新聞連載されていたそうです。)
父親が4人いる息子が主役の話です。
基本的に伊坂幸太郎の話は好きなのですが、これはいまいちでした。
”陽気なギャング~”程面白いわけでもなく、”魔王”程考えさせられるわけでもなく、”グラスホッパー”程手に汗を握るわけでもなく、”重力ピエロ”程見事な伏線回収があるわけでもなく、”死神の精度”程ジーンとくるわけでもない感じです。
4人の父親のキャラクターがそれぞれ面白いという点や全体の雰囲気としては、”陽気なギャング~”に似ていると思います。
ただ、そのキャラがあまり深く掘られていないのが残念でした。
あとは、ヒロインのキャラクターが個人的に受け付けなかったのかもしれません(笑)
気楽に読めますが、何となく物足りない作品でした。
ただ、富田林さんが態度を一転させた理由は最高だと思います。
とても伊坂幸太郎っぽいです。
黄色い目の魚(佐藤多佳子)
テッセイに会うことになった。
きっと、こういうのを青春っていうんだろうな。
要約してしまえば、思春期真っ只中な高校生の片思いが実る話。
とびきり苦くて、ときどき甘酸っぱい。
胸がキュッとなる。
私が初めて読んだのは中学生の時だったから、みんや木島よりも年下だった。
でも、同じ視線を経験してから読むと、この時期特有の不安感とか焦燥感がよりわかってさらに切ない気持ちになる。
たぶん、もうちょっと大人になったら、似鳥ちゃんや通ちゃんに感情移入するんだろうな...。
キャラクターもストーリー展開もセリフ回しも好きなんだけど、どうも文章構成というかこの作者さんの文の書き方が苦手です。少しラノベっぽいのかな....?
でも、それをもってしても、好きな作品です。
作品から漂う雰囲気は、トーキョー・クロスロードににているかもしれない。
社会的に別階級の話だろうけど。
こんな青春、送りたかったあああああああ。
もっと一緒にいたい。
消えない女になりたい。消えない男になってほしい。
時をかけるゆとり(朝井リョウ)
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/12/04
- メディア: 文庫
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私はお腹が弱い。
朝井リョウさんのエッセイです。
朝井リョウといえば、”桐島、部活やめるってよ”のイメージが強くエッセイも書かれていることは知りませんでした。
このエッセイを読み終わったとき、私の頭に残ったのは
「朝井リョウって馬顔なんだ...。」
ということでした。くどいほどでてきます。「馬顔」
そんなに馬顔でもないような気がするのですが....。
ある意味、本人のアイデンティティなのかもしれません。
この本のなかで、朝井さんは「いわゆる若者」がやりそうな馬鹿なことをいろいろしています。
ただ、着眼点が特別鋭いわけでも、文章表現が極めて巧みなわけでもないので読み流して終わってしまいました。
一回でいい感じです。
私は、”17・地獄の500キロバイク”のエピソードが一番面白かったです。
東京から京都まで自転車で行く話ですが、本当にバカバカしくて面白いです(褒めてます。)
私は器の大きな答えを叩きだした。頭がおかしかったといえる。
トーキョー・クロスロード(濱野京子)
私はそこはかとなく悲しい。
主人公、栞にとても共感できてキュンキュンする話です。
何となく強がって素直になれなくて、でも誰かに気づいてほしくて、自分でもよくわからなくなっていく....。
典型的な長女気質とでもいうのでしょうか。
自分を見ているみたいです(笑)
「浮いてる」まではいかないけど周りに馴染めない(気がしている)栞、表向きは人気者の耕也、そして完全に浮いている麟太郎。
3人の高校生を中心に、クラスメートやバンド仲間も含めた恋の話です。
”こんな青春をおくりたかった”と”こんな時もあった”のバランスが絶妙な作品だと思います。
そして、この作品ではさまざまな音楽が登場します。
栞のママ、由岐の十八番〈フィーリング〉
栞が初めて麟太郎のライブに行ったときの〈サテンドール〉〈バードランドの子守唄〉
Satin Doll / Count Basie Orchestra Live in Tokyo 1985
Sarah Vaughan with Clifford Brown - Lullaby of Birdland (EmArcy Records 1954)
麟太郎の野外ライブ〈A 列車で行こう〉〈テイクファイブ〉
Nikki Yanofsky Take the A Train Live in HD Bravo concert
麟太郎のバンドメンバーの結婚式で栞がひいた〈結婚行進曲〉
客が弾いた〈ムーンナイト・セレナーデ〉
今立っている場所も時間も、二度と出会えないんだ